タップダンスの歴史とは?アフリカのルーツから映画、現代の進化までを辿る

「この足音、なんだか心地いい」
そんなふとしたきっかけでタップダンスに興味を持った方もいるかもしれません。
舞台に響く軽快なリズムと、観客の視線を釘付けにするステップ。
その一つひとつには、長い歴史と進化の物語が刻まれています。
本記事では、タップダンスの起源から映画や現代のシーンまで、時代を追ってわかりやすく紹介していきます。

目次

タップダンスのルーツと誕生(~19世紀)

タップダンスは、アフリカとヨーロッパという異なる文化の出会いから誕生しました。
奴隷制度や移民という歴史的背景の中で、人々の身体表現が混ざり合い、やがて音楽と一体化した「足のリズム」が生まれていきます。
この章では、そんなタップダンスの原点と、初期に名を馳せたダンサーに迫ります。

アフリカンダンスとヨーロッパのステップダンスの融合

アフリカからアメリカへ連れてこられた奴隷たちは、鼓動のようなリズムを刻む身体表現を持っていました。
一方、イギリスやアイルランドからの移民は、靴を使って足でリズムを取る「ジグ」や「ホーンパイプ」などのステップダンスを持ち込んでいました。

このふたつがアメリカ南部で出会い、互いに影響を受けながら発展していった結果、足でリズムを刻むダンススタイル――つまりタップダンスの原型が誕生しました。
言葉や太鼓を奪われた黒人たちは、足音で感情や物語を伝える手段として、リズムそのものを進化させていったのです。

初期のスター「マスター・ジューバ」

19世紀中頃、アメリカのショービジネス界に突如現れた黒人ダンサー、それが「マスター・ジューバ」ことウィリアム・ヘンリー・レーンです。
彼は、アフリカ系のリズム感とヨーロッパ系のステップ技術を融合させた、まさに“タップダンスの原点”と呼べるパフォーマンスで観客を魅了しました。

wikipedia: Master_Juba

白人中心のヴォードヴィルの舞台で活躍した黒人パフォーマーとしては極めて稀な存在であり、その俊敏な足さばきと躍動感あるリズムは「目にも止まらぬ速さ」と称されました。
ジューバの登場は、タップダンスが単なる民俗芸能から、舞台芸術へと昇華していく重要な転機となったのです。

ボードヴィルで花開いたスター達(19世紀後半~)

19世紀後半から20世紀初頭にかけて、アメリカでは「ボードヴィル」と呼ばれる大衆向けの舞台芸能が流行します。
この時代、タップダンスはエンターテインメントとしての完成度を高め、舞台の花形として注目を集めました。
特に黒人ダンサーたちの活躍が目立ち、その中でもひときわ輝いたのが、ビル・ロビンソンでした。

ビル・”ボージャングルス”・ロビンソンと階段タップ

ビル・ロビンソンは、タップダンスの黄金時代を築いた伝説的なダンサーのひとりです。
愛称の「ボージャングルス」とともに、彼の軽やかな足さばきと洗練されたステージングは、多くの観客を魅了しました。

特に有名なのが、階段を使って踊る「階段タップ」。段差を利用して音とリズムを変化させるという独創的な演出は、タップの可能性を大きく広げました。
白人中心の興行界において、彼は黒人タップダンサーとして初めて単独主演を果たし、その芸術性は映画界からも高く評価されました。

映画とジャズが彩る黄金時代(1920年代~)

1920年代からは、トーキー映画やブロードウェイミュージカルの隆盛とともに、タップダンスが黄金時代を迎えます。
ジャズとシンクロするリズム、銀幕で踊るスターたち――この時代、タップは洗練された芸術として広く親しまれるようになります。
中でもアステア、ケリー、ニコラス兄弟の存在は、タップの表現力とスター性を象徴するものでした。

フレッド・アステアのエレガンス

フレッド・アステアは、「優雅なタップ」の代名詞とも言える存在です。
スーツをまとい、まるで滑るようにステップを踏むそのスタイルは、舞台から映画へと活躍の場を広げたことで一気に大衆化しました。

彼の特徴は、音楽との一体感と品格ある動き。共演者ジンジャー・ロジャースとのペアダンスは、観る者に夢と洗練された時間を提供しました。
タップダンスを「美しく見せる」ことに成功したアステアは、その後の映像表現にも大きな影響を与えました。

ジーン・ケリーのダイナミズム

ジーン・ケリーは、タップダンスに力強さと革新性をもたらしました。
代表作『雨に唄えば』では、傘を片手に水たまりを踏みしめながらタップを踊るシーンがあまりにも有名です。

ケリーの特徴は、身体全体を使った大胆な動きと表情豊かな演技。
筋肉質な体を活かしたダイナミックな動きは、タップに「男性的で情熱的」な魅力を加えました。
エンターテイメント性を追求したそのスタイルは、後進のダンサーたちに多大な影響を与えました。

ニコラス・ブラザーズの超絶技巧

ハロルドとフェイユーのニコラス兄弟は、観客の度肝を抜くアクロバティックなタップで知られています。
階段から飛び降りて足を広げたまま着地し、すぐにまたステップを踏むなど、まさに人間離れした動きを披露しました。

彼らのタップは、リズム感と身体能力の極致。
型にはまらない自由な動きと、卓越した音楽性が融合したスタイルは、当時のアーティストたちからも高く評価されました。
黒人ダンサーとしての誇りを胸に、舞台と映画の両方で活躍した彼らは、タップの限界を押し広げた存在です。

試練の時代とリズム・タップの革新(1960年代~)

1960年代以降、テレビやロック音楽の台頭により、タップダンスは一時的に主流エンターテインメントの座を退きました。
しかしこの沈黙の時代に、タップは新たな形での革新を遂げていきます。
その旗手となったのが、グレゴリー・ハインズによる「リズム・タップ」です。

グレゴリー・ハインズと「リズム・タップ」の誕生

グレゴリー・ハインズは、従来のタップダンスとは一線を画した「リズム・タップ」を打ち出し、新しい命を吹き込みました。彼のスタイルは、あくまで音楽の一部としてのタップを追求するもので、ステップというよりも“即興の打楽器”としての表現を重視しました。

その自由でジャジーなリズム感は、タップをクラシカルな芸としてだけでなく、「音楽と対話する身体芸術」へと進化させたとも言えます。また、映画『ホワイトナイツ』やブロードウェイでの活躍を通じて、タップを再び大衆の目に届ける役割も果たしました。

彼の姿勢は、次世代のダンサーたちに大きな影響を与え、タップダンスを”懐古的な芸”から”現代的な表現手段”へとシフトさせるきっかけとなったのです。

現代タップダンスの多様な進化と日本のシーン

2000年代以降、タップダンスはストリートカルチャーや現代音楽と融合し、さらなる進化を遂げています。
アメリカではセヴィアン・グローヴァーが新時代の扉を開き、日本でも舞台芸術や映画を通じて独自の発展を見せています。
この章では、タップの今を形づくるキーパーソンと、日本におけるシーンの広がりを見ていきましょう。

セヴィアン・グローヴァーがもたらした衝撃

セヴィアン・グローヴァーは、リズム・タップの進化系とも言えるスタイルで世界を席巻した現代の巨匠です。
彼のタップは、もはやパーカッションの一部。ジャズ、ヒップホップ、ファンクといった音楽ジャンルとシームレスに融合し、観客の感情を揺さぶる力を持っています。

即興性と表現力に優れたそのスタイルは、グレゴリー・ハインズの精神を受け継ぎながらも、より若々しく攻撃的。
舞台『ブリング・イン・ダ・ノイズ、ブリング・イン・ダ・ファンク』では、黒人の歴史やアイデンティティをテーマに、タップで社会的メッセージを発信しました。
彼の存在は、現代タップの可能性を世界に示す象徴となっています。

日本におけるタップダンスの歴史と発展

日本にタップダンスが伝わったのは、1920~30年代のこと。
戦前のレビューショーや映画館で紹介され、その後ジャズの広がりとともに愛好者を増やしていきました。
戦後には海外から帰国したダンサーや音楽家たちが普及活動を行い、徐々に独自のスタイルを築いていきます。

2003年の北野武監督作『座頭市』では、ラストシーンに圧巻のタップダンスシーンが登場し、国内外で大きな話題となりました。
現在では全国各地で教室やイベントが開催され、ジャンルも伝統的なスタイルからストリート系、即興タップまで多岐にわたります。
タップは日本においても、確実に「進化し続ける表現」として根付いているのです。

タップダンスの歴史に関するQ&A

ここでは、タップダンスに関して初心者の方からよく寄せられる質問にQ&A形式でお答えします。
歴史をふまえた視点から、タップの魅力や始め方についても触れていきます。

Q1:他のダンスとの違いは?

タップダンス最大の特徴は、「音を出す」ことに重点がある点です。
足元に金属製のタップ(プレート)を取り付け、ステップを踏むことでリズムを生み出します。つまり、音楽の一部として成立するダンスなのです。
バレエやジャズダンスなどが「視覚的な美しさ」を重視するのに対し、タップは「聴覚的なインパクト」も含めて表現の一部としています。
この点が他のダンスジャンルと大きく異なります。

Q2:有名な映画は?

以下の映画が、タップダンスの魅力を楽しめる代表的な作品です。

  • 『雨に唄えば』(1952年/ジーン・ケリー)
  • 『トップ・ハット』(1935年/フレッド・アステア)
  • 『座頭市』(2003年/ラストに和と融合したタップ演出)
  • 『ブリング・イン・ダ・ノイズ、ブリング・イン・ダ・ファンク』(舞台映像)

どれも時代ごとのスタイルや文化背景を反映しており、タップの歴史を体感するにはぴったりの作品です。

Q3:今からでも始められる?

もちろんです。タップダンスは年齢や経験を問わず、誰でも始めることができます。
最初はリズムを感じながら簡単なステップを習得するところから始まり、靴さえあれば自宅でも練習が可能です。

最近ではオンラインレッスンも充実しており、趣味として気軽に楽しむ人が増えています。
「音で遊ぶ感覚」を大切に、自分らしいリズムを見つけることが上達のカギです。

まとめ|タップダンスの歴史を知ることは、リズムの物語を辿ること

  • タップダンスはアフリカとヨーロッパのリズム文化の融合から誕生した
  • 初期の黒人スター「マスター・ジューバ」が舞台芸術化の礎を築いた
  • 映画の黄金時代にはアステア、ケリー、ニコラス兄弟が大活躍
  • グレゴリー・ハインズが生んだ「リズム・タップ」が現代表現を開拓
  • セヴィアン・グローヴァーや『座頭市』を通じて、日本でも独自に進化中

タップダンスの歴史を振り返ることは、ただの年代記をなぞることではありません。
そこには時代の痛み、文化の出会い、そして表現への情熱がリズムとして刻まれています。
あなたの一歩一歩にも、その歴史の続きを刻むことができるのです。
さあ、今日からあなたのリズムを踏み出してみませんか?

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